台湾7-ELEVEN戦術&戦略

可塑剤成分DEHPを含む起雲剤混入飲料問題

 2011年6月14日のworldblogtaipeiで紹介した可塑剤成分DEHPを含む起雲剤混入飲料問題も一先ず終息した感じである。これは、コンビニ・台湾7-ELEVENの売上構成比から推測される。2011年1月〜5月の統一超商(台湾7-ELEVENを運営する会社)の飲料構成比から推移される。

年月 飲料構成比 前年比
2011年1月 31.9% 4.7%
2011年2月 34.2% 9.5%
2011年3月 33.5% △ 3.5%
2011年4月 36.6% 7.7%
2011年5月 41.4% 5.2%
 
数字より見えてくるものは、3月は構成比前月ダウン、前年比マイナス3.5%と台湾コンビニの構成比第1位の飲料が顕著に落ちた。当初、運動飲料を店頭から撤去し、販売するものがないと、顧客の買い控えが理由だろう。しかし、台湾特有の路面ジュース・お茶販売店で多数起雲剤混入の飲料が多数摘発され、水分補給に混沌とした消費者を取り込んだといえる。また、逆境の状態での戦略も徹底していた。自社ブランド(統一商品)の安全をうたい、台湾式販売「賣一送一(マイイー ソンイー)」一個買ったら、一個オマケ方式での販売攻勢、DORAEMON轉彎風扇首掛け型扇風機のプレゼント企画と徹底的な戦略で大手百貨店やスーパー、路面FCジュース・お茶販売店が売上に四苦八苦する中、CVCコンビニ業界はお客様の水分補給という顧客の第一次欲求を満たしたのである。また、例年より早く暑い日が始まったのも好材料である。

 昨日からは、例年好評の2本購入したら、くじ引きで割引。最低、NT$1なんて販促も始めている。これは暑い時期に、賣一送一や2本目5折(50%off)より効果があるのだろう。くじ引きの結果は75折(25%off)より高く設定してあると思う。多分、AVG79折(21%off)が設定値である。

台湾7-ELEVENの販促活動

 台湾7-ELEVENの販促活動でお客様にプレゼントされるDORAEMON轉彎風扇首掛け型扇風機ただもらえる訳ではない。66NT$購入すると、DORAEMONのシールを1枚もらえる。また、販促商品を購入すると別途1枚のシールがもらえる。このシールを30枚集めるか?もしくは10枚集めて66NT$払うともらえる。みんな躍起になってシールを集めるのである。

 なぜ、このような販促活動が出てきたのか?日本のコンビニの客単価は2010年570円(NT$207)に対して、台湾のコンビニの客単価はNT$60(\165)約1/3である。ひとつは客単価NT$60をわざわざNT$66以上購入させれば、それだけで売上1割増である。それがNT$66に設定された秘密である。また、台湾で人気のあるキャラクター3種類を順番に使う。ちび丸子ちゃん→Kitty→DORAEMONである。この順番もお客様を飽きさせないで売上貢献させる手段である。また、台湾7-ELEVENのキャラクター OPENちゃんも控えている。

 30枚にも理由がある。台湾の人は1日2〜3回コンビニに行くという。2回なら2週間、3回なら10日で集められる。30枚集めるには、NT$1,980以上消費していただけるのである。大卒新卒平均給与NT$30,000の約10%をすべてもぎ取ろうという戦術である。

首掛け型扇風機の原価をNT$100と換算すると、販促費は計算式になる。

顧客の消費金額 NT$66 × 30回 = NT$1,980 
従来の見込売上 NT$60 × 30回 = NT$1,800 
売上増の効果   NT$6 × 30回 = NT$180 10%の売上増
販促費用負担  NT$100 ÷ NT$1,980  = 5 % 
実際の回収率 25%とすると・・・NT$100 × 0.25 = NT$25
実際販促負担  NT$25 ÷ NT$1,980  = 1.2% 
販促費用 1.2%をかけて、売上を10%増という見事な方法である。

なぜ台湾のコンビニは頻繁に販促を行うのか?

なぜ台湾のコンビニは頻繁に販促を行うのか?これには理由がある。1つは、2002年末から台湾全土で施行された「レジ袋およびプラスティック類(発砲スティロールを含む)使い捨て食器制限政策」がある。簡単に言うと、日本では無料で提供される手提げポリ袋が、台湾では有料なのである。価格はNT$1〜2(約¥2.7〜5.4)で販売されるようになった。2002年まで1店舗当りの売上を伸ばしてきたCVCコンビニは、わずかであるが3〜4%落ち始めた。2005年から今回同様な販促を始め、売上向上を図った。

2番目は、コンビニ大手2社の競争である。2000年比較で7-ELEVEN 2,641店舗、台湾FamilyMart 1,011店舗。台湾人口は約2,300万人なので、2社だけでで6,298人に1店舗であったが、2010年段階で7-ELEVEN 4,750店舗、台湾FamilyMart 2,599店舗、ここ10年間で店舗数は2倍、ただし1店舗当りの人口は3,130人と半分に激減した。実質、2社の一騎打ち(台湾では最近PK戦と使うことが多い)である。現段階では7-ELEVEN の売上は、FamilyMartより30%ほど高い。ただし、7-ELEVENは2009年から店舗数は微増である。

7-ELEVENはどんな戦術をしているのか?

 7-ELEVENはどんな戦術をしているのか?私はこの店舗数の数字を見て目を疑った。「新しい7-ELEVENは出店しているのに?」しかし、会社資料で売上は増えているが、店舗数は増えていないのである。スクラップ&ビルド(老朽化した店舗や小規模店舗、家賃比率の高い不採算店舗を閉店し、同じ商圏(または地域)で大規模の新店舗に置き換えること)を行っていたのだ。我社の交易廣場ビルの1Fの7-ELEVENは、近くのNEO19 を閉鎖して、まさに移転してきたのだ。また、隣の店舗が空いたから一緒に大きくしてしまい、飲食スペースを作る改装店舗も見られる。店舗面積を広げ、ファーストフードや珈琲ショップの顧客を取ってしまおうという戦術なのだ。

 また、売上が上がっているのはこれだけではない。商品のブラッシュアップである。一定のレベルに達した後、さらに磨きをかけていることである。台湾には、他のコンビニは存在するが、7-ELEVENとFamilyMart以外は商品の品揃えでは遜色ないが、品質の部分では一定のレベルに達していないので今回は割愛させていただく。

 商品のブラッシュアップだが、私が来台した10年前に比較して、まずおにぎり・お弁当が非常に美味しくなった。また、商品もバラエティーに富んでいる。写真の稲荷豆皮は、日本製の稲荷の皮に中はタケノコご飯である。温めて食べると非常に美味しい。価格は、NT$25(約¥69)明太子鮭はNT$30(約¥83)、最近リニューアルしたハウスカレーはNT$58(約¥165)珈琲もできたてCITY CAFÉを導入。肉まんコーナーやおでんコーナーの商品、クリンリネスの充実。店舗によってはPB冷凍食品の販売や、セルフスタイルでトッピングできるHotDogコーナーを作り、椅子・テーブルを置いて食事できるようにしている。 

 起雲剤混入飲料問題から台湾7-ELEVENの迅速で適切な対応と、チェーンストア理論に則った戦術・戦略は非常にすばらしい。現在2位の台湾FamilyMartは7-ELEVENを店舗数、1店舗当り売上で追撃するのだろうが、台湾7-ELEVENは台湾現在のCVCコンビニ業態は、4年前に飽和と判断し、スクラップ&ビルドと商品のブラッシュアップを徹底し、台湾国内の競争相手は、FamilyMartではなくFF(ファーストフード)やCS(珈琲ショップ)を標的にしていると思われる。台湾でFFやCSは出店立地や市場規模でまだまだ出遅れているし、やがて市民の生活習慣の変化により、屋台や路面ジュース・お茶販売店・弁当屋とは商品品質・便利性・価格・安全性で十分対抗できるし、これを構築してメインランド中国で圧勝する為の準備なのであろう。今後の台湾コンビニの動向は目が離せない。